母子訪問看護に興味があり、訪問看護ステーションに就職して数ヶ月が経ちました。
初めは介護保険の訪問看護がほとんどで、医療保険が数件、特指示は1件でした。
…さて、今の一文の意味がわかりますか?
訪問看護が初めての私には、それがどういった意味なのか全くわかりませんでした。
「週に何回訪問できるのか、何分までか、夜間対応時の加算は?」
こういった事項も決まっていることであり、当然理解しておかなければいけません。
また、在宅看護と病院看護は何か違うな、と思うことも出てきました。
よくわからないけど、訪問看護の仕組みを知らないといけないぞ。
成人看護の復習と同時に、「在宅看護」の視点を身につけないといけないぞ。
そんなときに「在宅看護指導士」という資格を知りました。
テキストを見て、「これを知りたかった!」と唸る内容ばかり。
現場で活かしたい、受験レベルになりたい、合格したい!と臨んだ資格受験。
無事合格することができました。
#在宅看護指導士 合格しました!!!
絶対落ちてると思ってた😭
嬉しい😭旦那も、違う試験受けて受かってた!
今夜はお祝いです😆🎉 pic.twitter.com/vmOmCXAiQb— 助産師こぐま🧸 (@koguma_hukugyo) July 9, 2024
在宅看護指導士って何が学べるの?
母子訪問看護をしたい人が勉強して、何になるの?
そんな方に声を大にして言いたい。
「在宅看護指導士の勉強内容は、訪問看護師の根幹部分」
「母子訪問看護をしたい人こそ、在宅看護指導士の勉強をしよう!」
在宅看護指導士とはどのような資格なのか
在宅看護指導士とは何か
全国在宅医療マネジメント協会(JHMA)の認定試験により得られる資格です。
在宅看護指導士とは、在宅看護領域で生きた看護を実践し、リードできる人材を育てる資格です。
訪問看護の事業所は、5人以下で経営している小規模な事務所が多いです。
だからこそ、看護やケアだけでなく「人を育てて、組織を育てる」自律できる訪問看護師が求められています。(引用:ASTICK(医療系資格試験情報サイト))
看護のチカラで地域を究める
訪問看護師には、「利用者良し・看護師良し・経営良し」この3つの「良し」のバランス感覚が重要です。このバランス感覚を養うことが、後輩育成、組織力強化、さらには地域成長の要となります。
在宅看護指導士では実践に必要な知識をはじめ、家族支援、緊急性の見極め方、リスク管理、経営とブランディング、などを包括的に学習します。(引用:JHMA)
在宅看護指導士の受験資格・合格率・難易度・メリット・スケジュール
次のいずれかの免許および実務経験年数を有する者
- 看護師・理学療法士・言語聴覚士・作業療法士
- 実務経験2年以上
ここに助産師の記載がないため、助産師の実務経験が認められるかはわかりませんでした。
私は看護師実務経験が3年あるので、それを記載し出願し受験資格を得ることが出来ました。
助産師の実務経験が認められるかは、現在問い合わせ中です。
合格率
第1回(2024年)3,583名 合格者2,296名 合格率64.1%。
難易度
看護師などの国家資格を有している人が受験して、合格率が64.1%であることから、簡単な資格ではないです。
個人的には、難易度は少々高いと思います。
保険制度、営業、災害、契約の仕方、家族ケア…この辺りは始めて学ぶ内容なので、一から覚えなければいけませんでした。
大きな量を占める「疾患別ケア」は、看護師経験があれば馴染みのある内容のため、多少は勉強しやすいと思います。
メリット
THEOケアワーカーでの説明がとても腑に落ちたので、ご紹介します。
在宅看護指導士は、在宅看護の視点に特化した知識とスキルを持つ専門家です。
この資格は、地域に携わる看護師の発想力を刺激し、新たなキャリア形成を支援することを目的としています。
特徴①専門的知識の習得
在宅看護の特化した知識とスキルを学べる。特徴②キャリア形成の支援
新しいキャリアの選択肢や発想力を支援する。特徴③地域医療への貢献
地域医療の質向上や地域社会への貢献が期待される。特徴④経営・ブランディングの知識
経営やブランディングに関する知識も習得可能。特徴⑤多岐にわかるカリキュラム
疾患別ケアや家族ケアなど、幅広いカリキュラムが提供される(引用:THEOケアワーカー)
スケジュール
第1回:
受験申込期間:2023年11月3日~2024年5月10日
模試申込期間:2024年2月2日~4月19日、回答締め切り4月26日、結果発送5月中旬
試験期間:2024年6月10日~6月23日
*模擬試験の問題集と解説集は、模試終了後に販売されました。
合格発表:2024年7月9日
第2回:
受験申込期間:2024年11月1日~2025年5月20日
試験期間:2025年6月9日~6月22日
結果通知:2025年7月頃
在宅看護指導士の勉強内容は、訪問看護師の根幹部分
ここからは、私が考える「在宅看護指導士を勉強する意義」を書いていきます。
保険制度を理解することで、在宅療養チームの一員となり、看護ケアを工夫できる
訪問看護をやる上で、初めに直面する「なにそれ?」が保険制度だと思っています。
冒頭で書いた「介護保険がほとんどで、医療保険が数件」―
この「介護保険」「医療保険」というのが、訪問看護をやる上で非常~~に重要です。
介護保険であれば例えば1回20分未満、1回40分未満…などの区分があり、それは話し合いを経て、ケアマネージャーが立てたケアプランに基づき、その時間で看護提供されます。
ケアプランというのは、要介護度(要支援1~要介護5)に応じた単位数(区分支給限度額)の範囲内で作成されているものです。
そのため、訪問看護師が「この人にはもっと訪問が必要だ」と思えばケアマネージャーと相談することになります。
なんか、いきなり難しい…。
そう、複雑で難しいんです。
でも、この時、要介護度とは何か、区分支給限度額というものがある…そういった知識がなければ、ケアマネージャーと相談どころか会話にもならないでしょう。
在宅療養を支える“チーム”になるには、一定の知識レベルが必要です。
一方医療保険には単位数という考えはなく、「週に訪問できる回数」「訪問できる時間」というのが明確に決まっています。
ただし特例があり、ある疾病・ある状態の場合には、訪問できる回数が変わります。
これらは、実際利用者からもよく質問を受ける内容です。
ある程度返答できる知識を持っておかないと、利用者の安心感・信頼感にはつながりません。
また、費用負担は1~3割負担で、年齢や利用できる制度によって負担割合は変わります。
訪問看護の必要性はわかっていても、金銭的に訪問を渋る方もいらっしゃいます。
訪問自体を負担に捉えてしまうことで、協力を得られないこともあります。
そういったストレスを把握するためにも訪問回数や費用負担は知っておくべきだし、それを知らずに看護を提供できるわけがありません。
この人にはどれだけ訪問看護を提供できるのか。協力、介護力はどうか。
それによって看護計画も大きく変わります。
病院看護とは違う“在宅看護”の視点を学べる
ちなみに、「在宅看護」と「訪問看護」の違いですが…。
ナースペースのサイトによると
一般的に在宅看護は、病気や障害をもつ方が住み慣れた自宅で療養を続けられるように看護を行うことを指します。
一方訪問看護は、療養中の利用者さんがいる居宅(老人ホームやグループホーム等も含む)に医療従事者(看護師、理学療法士、保健師など)が訪問して、看護を行うことを指します。(引用:ナースペース)
とあります。
ざっくりと、「在宅看護→自宅療養」「訪問看護→老人ホーム等も含む」ということかと思います。
訪問看護初心者としては、「在宅看護=訪問看護」として書いていきますね。
病院内での看護と、在宅での看護は、違う部分が多くあります。
食事
病院では主治医の指示の下、栄養士が献立を考え、調理されたものを食べます。
在宅では、主治医の指示、看護師の助言があったとしても、献立を考えて調理をするのは、利用者本人(あるいは家族)です。
病識の程度や、調理能力、食材が手に入りやすいか等で、食事内容は大きく異なります。
1日2食のリズムの方、夜食が習慣の方もいらっしゃいますし、食事が原因で症状が悪化し入退院を繰り返す方もいます。
そういった方に対し、例えば宅配食を提案する、簡単に調理できるメニューを考える、食事管理の必要性を伝える、生活リズムに合った食事時間・回数を提案することが出来ます。
また、在宅看護指導士テキストから引用すると
窒息・誤嚥のリスクがあっても、「口から食べること」を強く望む患者にとって、医師や看護師の理解があるかはQOLを大きく左右する。
「食べる」「食べない」ではなく、「リスクをなるべく抑えて食べる」という第3の選択肢を示す。(引用:在宅看護指導士テキスト)
食べることそのものが苦痛の方もいる。食べることが必ずしてもその患者のQOLの向上につながるとは限らない。(引用:在宅看護指導士テキスト)
病院勤務時代は「病気があるからこそ健康的な食事を」と思っていましたが…。
「少々のリスクをとりつつ、本人の希望に添った食生活を送れることがQOLにつながるんだな」「それが出来るのが、決まりが強い病院ではなく、“生活”を重視する在宅なんだな」と思いました。
在宅は、とにかく生活を重視しています。
転倒
転倒リスクについても、考えが違う部分があります。
病院で転倒すれば、即インシデント、アクシデントになることも大いにある。
インシデントレポートを書くことになるから…という訳ではないのですが、とにかく「転倒させない!」ことが重要視されます。
一方在宅では、転倒リスクがあっても四六時中誰かが見れるわけではありません。
そうなると、リハビリ等で転倒リスクを下げる介入はしつつも、“転倒しても大事に至らない工夫”が必要になってきます。
例えばフローリングには絨毯やマットを敷く、ベッドやソファは低床にする、転倒しても立ち上がれるように一部手すりをつける、ブザーや携帯などを首にぶら下げてもらうなど。
転倒しても痛みと怪我が最小限で済み、1人でも立ち上がれるような工夫が必要。
(引用:在宅看護指導士テキスト)
在宅では、転倒することを想定した工夫も必要なんです。
急変時対応
急変時の対応については、大きく異なります。
訪問時やオンコールで急変にあたっても、近くに医療スタッフはいません。もちろん医師もです。
心電図もなければ、点滴・酸素投与も出来ません。
病院では人を集め、記録係やルート確保、医師・家族への連絡などをチームで行います。
しかし、在宅看護では一人です。
まずバイタルサインを測定するのか、測定するより前に救急要請すべきなのか。
電話を通じて先輩看護師等の指示を仰ぐことは出来ますが、“現場にいるのは自分だけ”というプレッシャーは相当なものだと思います。
これが夜中であれば尚更です。
急変時は何を観察するのか、救急搬送の目安、緊急度と重要度。
在宅看護に慣れていない方にとっては、ここは絶対に勉強すべき内容です。
また、病院内とは違ってすぐに医療介入が出来ないからこそ、「急変の前兆を見逃さない」という視点も大事。
在宅看護では、「何か変!?」と気付いて急変を起こさないことが重要です。
助産師こそ在宅看護指導士を勉強すべき3つの理由
ここまで書いてきましたが、「はたして助産師が在宅看護指導士の勉強をしてどうするの?」と思った方も多いはず。
訪問看護をするなら、勉強した方がいいのかな?
でも勉強しなくても問題ない気もする。
ハッキリ言います。
訪問看護をするなら、助産師こそ在宅看護指導士を勉強すべきです!
助産師こそ在宅看護指導士を勉強すべき3つの理由
①ケアマネがいないため、自分たちが熟知し見通しを持つ必要がある
②母子以外の訪問看護ケアを学ぶことができる
③看護師と協働できる
ケアマネがいないため、自分たちが熟知し見通しを持つ必要がある
訪問看護で使う保険には、介護保険と医療保険があります。
母子訪問看護で使う保険は医療保険のみですが、医療保険の中でも提供できる訪問看護の日数が決まっていたり、使える制度、加算もそれぞれです。
そして、母子訪問看護の特徴として「ケアマネージャーがいない」ということがあります。
そうなると、訪問看護ステーション側が制度を熟知しておく必要があるわけです。
もう一度言います。
ケアマネがいないから、自分たちが知っておかなければいけません。
ケアマネがいる介護保険の場合でも、知っておくべきだけどね。
それはそうだけどね。ケアマネがいない分、より責任があるということ。
そして、「特別訪問看護指示書とは…」「訪問看護指示書の内容(診断名、指示期間など)」などが理解できれば、今後の見通しをママに示すことができます。
そうすると…
「この時期まで毎日訪問できる、それ以降は週3日以内、訪問自体は〇〇月末まで…。それまでに△△という問題を解決できるように計画を立てる。解決できなければ、この時期までには主治医と相談、その前にスクリーニングや体重等の評価を行う。それにかかるお金の負担はいくらになるか…」
このように保険制度の中で提供できる看護計画を立案し、ママに説明することが出来ます。
以前、特指示が終われば訪問終了と思われていたママがいて、「訪問自体は週3日来れます」と伝えるとすごく安心されました。
見通しを立てて伝えると、ママも落ち着けますね。
母子以外の訪問看護ケアを学ぶことができる
言わずもがな、助産師として働くには、看護師の資格が必須です。
助産師ケアのベースには看護ケアがあると思っています。
助産師しかしないからといって、「看護師を勉強しなくていい」とはなりませんよね。
例えば神経難病やHOTなどの知識が母子訪問看護に活きることはほぼないでしょうが、やはり看護への知識を深めるという意味でも、助産師は看護師の資格が必須と位置付けられていることからも、看護の勉強は必要だと思います。
ちょっと綺麗事な話になったので、少し現実的な話をします。
現実的に。
私は、母子“特化型”訪問看護を一から始めることは、非常にハードルが高いと考えています。
母子訪問看護を始めて、いずれ“特化型(=母子訪問看護のみ)”に広げることは出来るかもしれません。
でも、母子特化型訪問看護からスタートするのは、経営面からかなり厳しいと思っています。
ここは簡単に書きますが、ニーズはあれどニッチであることに加え、長期的な利用が少なく、また人材確保が簡単ではないからです。これは私個人の考えで、詳細は割愛します。
(母子特化型でスタートされたところもあるようなので、それはすごいなと思います!)
私の理想は、介護訪問看護も行ったうえで、母子訪問看護を併用していくスタイルです。
介護訪問看護で長期的に、安定的に売上を立てて、その上で母子訪問を行う。
収入の柱が母子訪問以外にもあることが、経営的に重要だと思うのです。
そうなると、助産師であっても看護師の資格を有しているので、介護訪問看護も行くことがあるでしょう。
介護訪問看護に行くのであれば、上に書いた通り、在宅看護指導士の勉強は非常に役に立ちます。
いろいろ勉強し直すよりも、これ1冊勉強したら対応できそうだね。
看護師と協働できる
助産師が介護訪問看護に行くのと同様に、看護師が母子訪問看護に行くこともあります。
例えば精神疾患があり、精神訪問看護として複数名訪問する場合。
多胎児への訪問看護として、複数名訪問する場合。
複数名でなくても、看護師は母性看護、小児看護を学んでいますから、看護師が母子訪問看護をすることは大いにあります。
そもそも助産師は看護師よりも圧倒的に少ないです。母子訪問看護をするのが助産師だけ、と決めつけていると、訪問できるスタッフが足りなくなります。
そうなると母子訪問看護自体も広げていけません。
助産師と看護師が協力することが必要なのです。
助産師はやはり母子のケアが得意でしょう。
看護師はそれまでの経験領域から、母子が不得意な方もいるかもしれません。
それでも、ママを「成人女性」として心身を見ることは可能で、例えばママの体調不良に対するアセスメントは助産師よりも平たく(産科に偏る傾向がなく)、疾患を疑い対応する力があります。
「助産師といっても、わかるのは新生児まで」という話も聞くなぁ。
私もまさにそうで…。新生児以降であれば小児科看護師の方がはるかに詳しいでしょう。
また、産後うつなどの精神疾患に対しても、助産師が活躍できる場面もあると思いますが、助産師よりも精神科看護師の方が力になる場面もあるでしょう。
でもここでケンカするのではなくて、助産師と精神科看護師が協働できればいいな、と思うのです。
訪問助産師としては、小児科領域も精神科領域も勉強しなければいけないと思っています。
それは前提にあるとしても、やはり小児科経験のある/精神科経験のある看護師に付いて学び、一緒に母子訪問看護をしたいと思うのです。
看護師と協働するためにも、看護師がしている訪問看護を理解しておくことは必要です。
例えば介護訪問看護の方が忙しい場合に、少しでも看護師の力になれるか。
訪問をするだけでなく報告書作成や、ケアマネとのやり取りや点滴管理等。
私も正直すべて出来るわけではないですが、できる範囲でも協力することで、看護師メンバーとの連携がスムーズになっていると感じています。
助産師と看護師は同じ看護職だけど畑が違う。同じ看護職だから理解しやすく、畑が違うからこそ協働できれば心強い存在になる。…と思っています。
在宅看護指導士の勉強がおすすめなのは、訪問看護/母子訪問看護に携わるすべての方です
実際に資格をとるかどうかは、正直どちらでも良いと思っています。
助産師の実務経験が認められるかは、現在問い合わせ中です。
2024年現在で、在宅看護指導士の資格があるからといって加算はつきません。
2024年に第1回があったばかりで、まだ認知度も高くはないです。
なので、資格をとること以上に、「在宅看護指導士の勉強をする」ことに意味があると思っています。
訪問看護を勉強するには、まずはこの1冊ですね!!!
決して安くはないのですが…それでも買って勉強してふり返ると、買って良かったし、その日から今後もずっと役に立つ内容だし、おすすめできる1冊です。
訪問看護師が何をしているのかを知りたい方に。
訪問看護ステーションへの就職が決まり、事前勉強をしたい方に。
訪問看護を始めて、いろんな壁にぶつかっている方に。
訪問看護をしていて、自分の知識を確認したい方に。
先日届いた在宅看護指導士の合格認定証とバッジ😊
訪問看護の勉強頑張ってます🧸
それでも忘れるから、復習復習📖#在宅看護指導士 pic.twitter.com/XVDrefBGR0— 助産師こぐま🧸 (@koguma_hukugyo) September 29, 2024
まず勉強。
余裕があれば受験をし、合格できると尚良しです!
訪問看護が、在宅看護指導士を勉強する方が、母子訪問看護が、広がっていきますように。