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「事例でまなぶ 助産師ができる周産期のメンタルヘルスケア」をレビューする。

私が実際に読んで、参考になった本を紹介します。

今回紹介するのは、記念すべき1冊目。

「事例でまなぶ 助産師ができる周産期のメンタルヘルスケア」です。

この本との出会い:助産師仲間からの紹介

✔転職して1か月健診を担当することになったが、EPDSの見方がわからなかった。

✔産後ママのメンタル面を勉強し始めたときに、この本を助産師仲間から紹介された。

✔心理学を学ばれている助産師で、その人がおすすめするなら読んでみようと思った。

 

本の紹介

事例でまなぶ 助産師ができる 周産期のメンタルヘルスケア
病態生理、スクリーニング、服薬指導、多職種連携…
この1冊で全てがわかる
ペリネイタルケア2022年夏季増刊

著者 江藤宏美(長崎大学生命医科学域 教授)
出版 メディカ出版

<出版社からの内容紹介>
病態生理、各種ガイドライン、向精神薬といった基礎知識を踏まえて、妊産褥期を通した14事例から助産師によるスクリーニングやケアの実際を紹介。最新トピックス、対応のピットフォール、多職種連携のポイントについても解説し、知識とケアを体系立てて学べる。

 

 

目次

第1章 周産期メンタルヘルスに詳しくなろう

A周産期メンタルヘルスの病態生理
B周産期メンタルヘルスに関するガイドライン
C周産期メンタルヘルスのくすり
D助産師の役に立つメンタルヘルス対処法

第2章 周産期メンタルヘルス事例に学ぼう

 

 

私が特に感銘を受けた内容を紹介:『産後・授乳期の服薬指導』

第1章 周産期メンタルヘルスに詳しくなろう
C周産期メンタルヘルスのくすり
p.104『産後・授乳期の服薬指導』

読む前は、「服薬指導?症状があったり、出そうであれば、内服再開しましょう…ということかな。」という印象でした。

そんな浅い考えでしたが、冒頭の文章に衝撃を受けました。

“精神疾患を患っている母親に限らず、授乳期の育児支援においては、母乳や育児用ミルクといった栄養の種類にこだわることなく、母子の健康とともに、母親が育児に自信を持てるように支援することが重要です。”

薬を飲むor飲まない、母乳orミルク、そんな話ではない。

そんなことにこだわらず、健康に、育児に自信を持てること。

私は何を身構えていたんだろう、何にこだわっていたんだろう。

こぐま
こぐま

結局行きつくところは同じなのだと、気付かされました。

 

“母親の病状が安定し、育児ができるようになることを最優先として服薬指導を行います。”

これまでの安定していたペースが崩され、ただでさえ大変な育児生活。

育児をするには、ママ自身が健康でいることが大切。

今後悩む症例に当たったときも、著書のこの一文↑を軸に持つだけで、自分の関わりはぶれないでしょう。

 

特に、何度も見返した文章がこちら。

“(中略)一方で、夜間の授乳による睡眠不足や乳房ケアの難しさなどによって育児困難感や疲弊が蓄積し、母親の精神状態の悪化が懸念されるような場合は、医療者側から母乳から人工乳への切り替えを提案すべきであると考えます。”

母乳の利点、母乳育児を勉強してきた助産師にとって、「母乳から人工乳への切り替えを提案する」のは、これまで考えたことのない提案だと思います。

授乳を頑張っているママに「ミルクにしましょう」と言うこと。

以前現場で、悩みながらも、言葉を選んで、真剣に伝えたことがあります。

 

その対応は、間違っていなかったのだな…と私を支えてくれている文章です。

私はこの文章がなければ、この本を読まなければ、自分の対応がこれで良かったのか、ずっとモヤモヤしていたでしょう。

モヤモヤを抱えながら、今後も他のママ達に関わっていたと思います。

この文章に出会えたことで、「ママ自身が健康でいるために、時には母乳をやめるという選択があって良い」と知りました。

この本があることで、対応に自信が持てないときは、この本を読めば考える道しるべがあると思えました。

こぐま
こぐま

間違いなく、こぐまのメンタルヘルスケアのバイブルです。

 

 

感想:周産期メンタルヘルスを知りたい人に、病態生理から具体的な声かけまで教えてくれる本。

周産期メンタルヘルスの病態生理は、ママと関わる上で知っておくべき内容です。

ただ、急性期の色が強い産科の入院スケジュールの中では、進行性変化、退行性変化などの身体的な事柄が優先されることが多いです。

どうしても、“後回し”になりがちな周産期メンタルヘルス(自戒をこめて)。

 

しかし、進行性変化、退行性変化が適切で、身体的に回復しているとしても、体と心は切り離せない。

育児をしていくのはママとパートナーです。

育児をするには、ママが心身ともに健康であることが大事。

 

「一見元気そうで新生児のお世話も出来ているのに、育児に不安を持つ理由がわからない」

「産後の痛みもほとんどなく、乳房トラブルもないのに、積極的に授乳されないのはなぜだろう」

その“なぜ?”に、一歩踏み込むために。

知識として、介入技術として、この本が力になります。

周産期ケアに関わっている方、ママのメンタルに“なぜ?”を感じたことのある方、ママを含め子どもや家庭をサポートしたい方に、おすすめします。

 

 

著者の他の書籍を紹介

  • 助産師基礎教育テキスト 2023年版第6巻 産褥期のケア/新生児期・乳幼児期のケア
  • 助産師基礎教育テキスト 2022年版第6巻 産褥期のケア/新生児期・乳幼児期のケア

 

まとめ:今後何度も読み返す一冊

助産師として復職し、改めてママについて心理面から学ぼうと、真剣に読み込んだ本の一冊。

事例紹介では、訪問助産師(精神科訪問看護)の紹介もあり、今後訪問看護に進む身としても、大変興味深い内容でした。

こぐま
こぐま

この本をおすすめしてくれた助産師仲間に感謝です。

 

私はこの本を読んで、心にストンと落ちたり、背中を押されることばかりでした。

助産師仲間がおすすめしてくれたように、私自身もこの本を心からおすすめ出来ます。

もう一度ではなく、何度も読み返すであろう本の紹介でした。