「今の職場に不満はあるけど、お産の自信がないから今は転職できない。」
そんなこと、考えてはいませんか?
「働きやすいところに転職したい」と考えても、次の一歩が踏み出せない助産師は多いです。
その理由の一つに、「取り上げた分娩件数が少ないため、転職先で働けるかわからない」という“助産技術への不安”があると、こぐまは思っています。
こぐまは、新卒で総合病院に就職。
関われる正常分娩は少なく、そのまま後輩が増えていきました。
人間関係やプレッシャーなど、職場に不満はありました。
「転職先で通用するくらい、助産技術を身につけてから転職しよう」-
そう思っているうちに、どんどん時間が経っていきました。
その間も、人間関係は改善されなかったし、プレッシャーは大きくなるばかりでした。
助産技術に自信がなくても、今の職場をやめても良いんだ!
と当時の自分に伝えたい。
そんな気持ちで、今回記事を書きました。
えっ、転職先で通用しなかったらどうするの?
転職の際、助産技術があることはたしかに大事です。
でも、一番大事なのは「転職して何をしたいか」だと思っています。
もしお産の少ない病院で働いてたら、助産技術に自信がつくのはいつになるでしょう。
とにかく助産技術を身につけたいなら、お産が多い病院に行けば解決します。
そもそも助産技術にこだわらないなら、お産のない場所で働くのもありです。
「助産技術に自信がないから、転職できない」
そんな悩みは、この記事で解決します!
【助産技術の目安】“分娩介助件数が増えるほど、助産実践能力は高くなる”
「助産師の分娩介助件数と助産実践能力の達成度に関する研究」
はじめに:この記事でいう「助産技術」とは、分娩期のケアのことです。
取り上げた分娩件数が多いほど、助産技術が向上し、自信がついてくる。
この感覚を持っている助産師は多いと思います。
では、「助産技術ができる」と言えるようになるのは、分娩介助件数が何件くらいでしょうか。
結論から言うと、「分娩介助件数50件」です。
今からその根拠を解説します。
アドバンス助産師の認証に必要な条件の一つに、分娩介助100件以上と設定されています。
7年程度で達成できると考えられているようです。
この「分娩介助100件」という数字をもとに、分娩介助件数と「助産実践能力」の関係について、研究した論文があります。
(↓クリックすると、ダウンロードされます)
助産師の分娩介助件数と助産実践能力の達成度に関する研究
Seisen J. Nurs. Stud., Vol.10. 2021分娩介助件数を50件ずつ4群に分類し分析を行った。
Ⅰ群 1~50件
Ⅱ群 51~100件
Ⅲ群 101~150件
Ⅳ群 151~200件
*助産実践能力:分娩期の診断とケア・マタニティケア能力・専門的自律能力1 .助産実践能力と分娩介助件数にはすべての項目において正の相関がみられた事から,分娩介助件数を多く行う事で助産実践能力は達成していく.
2 .「分娩期の診断とケア」は,分娩介助件数がⅢ群とⅣ群間には有意差がなかった事から,分娩介助件数が50件までは速やかに達成し,それ以降は緩やかに高くなる能力である.
3 .「倫理的感応力」は,分娩介助件数がⅠ群とⅡ群間及びⅢ群とⅣ群間に有意差がなかった事から,緩やかに高くなる能力であり早期からでも達成しやすい.
4 .「マタニティケア能力」と「専門的自律能力」は,分娩介助件数がⅢ群とⅣ群間に有意な差がない事から,100件以上になると緩やかに高くなる能力である.また,Ⅰ群とⅡ群間に有意な差がある事から,まずは分娩介助件数50件を,次に分娩介助件数100件を目標とすべきだと考える.
5 .助産実践能力(分娩期の診断とケア・マタニティケア能力・専門的自律能力)の達成度には助産師経験年数そのものが直接影響を与えているのではなく,分娩介助件数を媒介する事で高くなる
まとめると、以下の3点です。
①助産師経験年数は直接影響しない。分娩介助件数が多くなるほど助産技実践能力は高まる。
②「分娩期の診断とケア」は、分娩介助件数が50件までは速やかに達成し、それ以降は緩やかに高くなる。
③「マタニティケア能力」と「専門的自律能力」は、100件以上になると緩やかに高くなる。
1~50件と51~100件の間に差があったことから、まずは分娩介助件数50件、次に分娩介助件数100件を目標とすべき。
助産技術があると自信を持って言えるのは、分娩介助件数50件
「分娩期の診断とケア」は、分娩介助件数が50件までは速やかに達成する。
このことから、分娩介助件数が50件あれば、助産技術があると自信を持って良いと思います。
分娩介助件数の上を目指せばキリがありません。
まずは分娩介助件数が50件あれば、胸を張りましょう!
転職活動をする時も、分娩件数が50件あれば、助産技術がありますと堂々と言いましょう。
転職の前に、どんな助産師になりたいか、目標とする助産師像を考えよう
助産師として活躍できる領域は、分娩以外にもあります
転職したいけど、助産技術に自信がない…。
そんなあなたに質問です。
あなたは、助産技術を極めたいのですか?
助産師=お産を取り上げる、というイメージは強いです。
ただ、母乳ケア、産後ケアなど、分娩以外でも助産師が活躍できる領域があります。
例えば母乳ケアでは、桶谷式、乳房マッサージ、授乳指導など、助産院を開院して取り組まれている方もいらっしゃいます。
もちろん入院中の授乳指導も、全てのママにとって価値のあるものだと思います。
産後ケアでは、授乳も含めた育児全般のサポートをします。
助産院でされている方もいらっしゃるし、病院内や地域でも関わっていけるケアです。
「産前・産後サポート事業ガイドライン」が令和2年に作成され、産後ケア事業が広まりつつある今、助産師の産後ケア能力は今後求められていくと思います。
妊娠期の保健指導も、妊娠生活を安全・スムーズに過ごしていくために必要です。
妊婦健診で限られた時間の中での個別指導、母親学級での集団指導。
プレパパを対象とする両親学級もあります。
それぞれ目的が違い、それぞれ異なった保健指導力が必要となります。
核家族化で身近に育児モデルが少なく、様々なネット情報が溢れている今、専門職である助産師のリアルでの指導は、とても重要なものです。
ハイリスク妊娠・分娩を助産師として管理できるスキルも、貴重です。
総合病院、周産期医療センターなどでは、HDP、GDM、多胎妊娠、前置胎盤など、様々なケースと遭遇します。
産科医療として管理するのは産科医ですが、助産師として観察・介入・アセスメントしていくには、それ相応のスキルが必要となります。
分娩以外でも、助産師が活躍できる場所は多い。
少しずつ重なる部分はあるけど、どの領域もその領域特有のスキルが必要だね!
お産以外に興味があるなら、いま助産技術に自信がなくても大丈夫
全ての領域のケアが完璧に出来る助産師は、おそらくいません。
自分が助産師として活躍したいのはどういう分野なのかを考えましょう。
母乳ケアや産後ケアなのか、それ以外なのか、やはり分娩介助を極めたいのか。
それが複数あっても良いです。
その中で大まかにでも優先順位を決めて、「いま」伸ばしたい能力は何かを考えましょう。
こぐまは、総合病院で「ハイリスク妊娠・分娩」を学びました。
2ヶ所目の個人病院で、ひたすら分娩を取り上げました。
今はお産の少ない個人病院で、産後ケアに関心を持ちながら勤務しています。
助産技術も伸ばしたいけど、母親学級にも興味があるな。
「お産がとれる」「母親学級に力を入れている」病院で働けたらいいな。
助産師として働く以上、助産技術を求められる場面もあり、そこで成長していくでしょう。
ただ、助産技術が助産師の全てではありません。
お産以外に興味があるのなら、いま助産技術に自信がないことを気に病む必要はないです。
今の職場では、自分がなりたい助産師に近づけないときに、転職を考えよう
お産以外に興味があるのなら、助産技術に自信がないことを気に病む必要はないと書きました。
大事なのは、「自分がどんな助産師になりたいか」です。
どんな助産師になりたいですか?
今働いている職場では、目指す助産師になれませんか?
一度客観的に考えてみましょう。
分娩介助件数が少ないことが不満の場合
とにかく助産技術を高めたい、分娩介助件数を増やしたいという助産師も多いです。
今時点で分娩介助件数が少なく、転職する自信がない場合は、まず2点のことを考えます。
①今後、自分の分娩介助件数が増える見込みはあるのか
②分娩介助件数が少なくても、サポートや振り返りの質で、助産技術を高められるのか
①今後、自分の分娩介助件数が増える見込みはあるのか
季節的に分娩自体が少ないこともあります。
新人助産師や実習生が分娩を取り上げることで、自分の順番が来ないこともあります。
今後病院の分娩件数は増えそうですか?
病院は、分娩件数を増やしたいと思っていますか?
ハイリスクを多く扱っていたり、分娩制限をしていませんか?
新人助産師や実習生が分娩を取り終えた後、自分の順番が回ってきそうですか?
分娩係を希望すれば、分娩係をつけてくれるような勤務体制、シフトですか?
これらをふまえ、自分の分娩介助件数が増えそうなのかを考えます。
増えそうなら、今の職場にいた方がいいのかな?
もう少し深く考えましょう。
増えそうであれば、それは自分の満足する件数でしょうか?
例えば、分娩介助件数が50件となるまでに、あとどのくらい時間がかかりそうですか?
それは、自分の納得できる年数ですか?
「自分が満足できるほど、分娩介助件数が増えそう」であれば、転職する必要はないでしょう。
少なくとも、「分娩介助件数が少ない」だけで転職を考えていたのであれば、転職する必要はないです。
「分娩介助件数は増えそうだけど、満足できるほどかわからない」のであれば、期限を決めて今の職場で働くことをおすすめします。
その期限になっても、「ここなら分娩介助件数が増えそう」と思えなければ、キッパリと職場を変えましょう。
「分娩介助件数は増えそうだけど、それは自分が満足できるほどではない」のであれば、それは「分娩介助件数が増えそうにない」として、次を読んでください。
②分娩介助件数が少なくても、サポートや振り返りの質で、助産技術を高められるのか
量が無理なら、質を考えます。
分娩介助件数が少なくても、サポートや振り返りの質で助産技術を高められるのかです。
例えば分娩進行中の先輩助産師のフォローが手厚いと、自分のアセスメントや介入をリアルタイムに修正してくれます。
分娩後の振り返りを密にできれば、反省点は頭に刻みこまれます。
分娩介助のケースカンファレンスがあれば、先輩助産師の考え、助産技術を学べます。
これらがなるべく日常的にあると理想的です。
少なくとも、自分が希望すれば、それに応えてくれる職場環境であれば、分娩介助件数が少なくても“質”でカバーできそうです。
“質”でカバーできそうな場合、そこでの学びは貴重なものです。
転職するのも一定のストレスがあるので、できれば今いる職場で働いた方がいいと思います。
反対に、“質”でカバーできないような職場であれば、転職をすすめます。
先輩助産師に聞いてもほとんど放置されたり、振り返りを煙たがれるようなところもあります。
そこではいくら働いても、1人よがりで自信のない助産技術を繰り返すのみになります。
分娩介助件数も増えないうえに、助産技術もなかなか上がりません。
そんなこと、本当にあるの?煙たがれる?
こぐまの時は、ありました。
先輩助産師にもよるし、病棟の忙しさにもよりますが…。
普段の業務も忙しく、新人助産師への指導もあります。
中堅助産師は良い意味で“自由に”、悪く言えば“ある程度放置”されていました。
まとめると、こんな感じかな。
・分娩介助件数は増えそうだけど、満足できるかわからないなら、期限を決める。
・分娩介助件数はあまり増えないけど、質でカバーできそうなら、今の職場に残る。
・質でカバーできそうにないなら、転職一択!
分娩介助件数以外に不満がある場合
どのような助産師になりたいかを、今一度考えます。
助産技術以外の力をつけたいのであれば、その力をつけるために今の職場が適しているかを考えましょう。
例えば、母乳ケアができる助産師になりたいのであれば、その病院が母乳推進しているのか、母乳外来があるか、授乳ケアへの研修参加を快く認めてくれるか。
産後ケアができる助産師になりたいのであれば、産後ママについてカンファレンスする環境があるか、地域保健師との連携を密にとる風潮があるか、産後外来との情報共有ができるか。
保健指導に力を入れたいのであれば、母親学級・両親学級の内容はどうか、個別指導も単なるマニュアル化されてはいないか、マタニティヨガ・マタニティビクス等への研修参加を認めてくれるか。
ハイリスク妊娠・分娩を学びたいのであれば、総合病院、周産期医療センター一択です。
正常分娩や、分娩介助件数が少ないのは覚悟した上で、そこで働くべきだと思います。
もし今の職場で、自分のなりたい助産師像に近づけるのであれば、今の職場で働き続けることをおすすめします。
どうして転職をしたいと思うのか。
自分はどんな助産師になりたいのか。
その助産師像に近づくために、今の職場が適切かどうか。
そこまで考えられたら、自信を持って働き方を選べるね!
助産技術に自信がないけど、お産がとりたくて転職したい助産師へ
助産技術に自信がなく、今後も分娩介助件数が増えそうにないのであれば、転職すべきです。
分娩介助件数が増えるのを待っていても、そのタイミングはきません。
助産技術に自信が持てるのは、いつになるでしょう。
「お産がとりたくて転職したい」―そう思うのなら、迷わず転職活動を始めましょう。
分娩件数が少ないと、採用してくれるところは少ないでしょう。
そこは腹を括りましょう。
分娩介助件数が少なくても採用してくれる求人は、希少です。
それでもその求人を探さないといけません。
その希少な求人を探すには、手間がかかるでしょう。
不採用の連絡もあるでしょうし、不採用だと直接言われると強く落ち込むかもしれません。
そこで、助産技術に自信がないけどお産がとりたい方は、転職サイトの利用をおすすめします。
基本的にこぐまは、転職サイトも含め、複数のやり方で求人を探すことをすすめています。
(助産師ママ、看護師ママの求人の探し方6選!併用例とそのポイントまで解説!)
ただ、今回のケースでは、転職サイトを強くおすすめします。
こぐまが転職サイトを強くおすすめする理由は3つです。
・助産技術に自信がない自分のアピールポイントを考えてくれること
・もし不採用になったとしても間に入ってくれること
助産技術に自信がないけど、お産がとれるようになりたい!
希少な求人を探し出して、転職する!
そう決めたのであれば、まず転職サイトを登録してください。
転職活動にリスクはありません。
求人があるかな…、転職して働けるかな…、そんな悩みは転職活動を始めてから考えましょう!
分娩介助件数が少なくて、やっぱり不安という助産師へ一言
“不安”は、自信がつくまでにいずれ通らないといけない過程
分娩介助件数が増える見込みがなければ、助産技術に自信がつくのはいつでしょうか。
むしろ、経験年数の割に助産技術が追い付いていないことで、どんどん外に出る自信がなくなっていきます。
今の職場では助産技術に自信がつかない、と思うなら、転職一択です。
こぐまは、総合病院と個人病院で働いたことがあります。
助産技術に自信がないなら、個人病院がおすすめです。
大きな病院であれば助産師も10人以上いて、「技術があるかどうか」で評価されます。
個人病院、クリニックは、助産師数人しかいないところも多く、「助産師であること」に価値を置いてくれるところも多いです。
助産師としての自分に自信がないのであれば、個人病院やクリニックに転職し、自信が持てるように少しずつ実績を積んでいくのがおすすめです。
勤務帯に助産師が2人、慣れてきたら自分1人ということもあり、なかば荒療治的に助産技術が向上していきます。
えっ、やっぱり心配だよ、自信がない…。
助産技術に自信がないときは、とにかくお産があれば怖くて、逃げ出したかったです。
分娩介助件数が100件を超えても、お産はやっぱり怖いです。でも逃げません。
分娩介助件数を重ねていく間は、どうしても不安が強いと思いますが、これはいずれ通らないといけない道なんです。
個人病院では、ベテラン看護師の完璧なフォローがあったり、医師との距離も近いです。
ハイリスク妊婦など、お産以外の業務に追われることも少なく、病院全体としてお産へのフォローが手厚いです。
たとえ助産師が1人であっても、チームです。
助産師1人だけでお産に臨む訳ではありません。
ベテラン看護師や医師が、しっかりフォローしてくれますよ。
転職活動自体はノーリスク。採用されてから転職するか決めてもOK
助産技術が少ない助産師の採用には、積極的なところと消極的なところがあります。
積極的に採用するところは、やはり慢性的な人手不足の病院が多いです。
それでも、採用する以上は現場で働けるように最低限の教育はすると思います。
こちらからお願いすれば、もちろん指導してくれます。
転職活動自体はノーリスクです。
分娩件数が少ない自分でも採用してくれるところがあれば、条件を確認しましょう。
採用が決まっても、求人条件と採用条件が多少違うことがあります。
条件を見て、ここなら助産技術を高められると思えたら、転職しましょう。
まとめ 助産技術への不安にとらわれず、どんな助産師になりたいかを考えよう
どうして転職をしたいと思いましたか。
それは、今の職場ではどうにもならないことですか。
転職先に求めることは何ですか。
あなたは、どんな助産師になりたいですか。
これが明確であれば、助産技術があろうとなかろうと、転職活動しましょう!
「分娩件数50件」あれば、助産技術に自信を持ってください!
助産技術が少なければ、採用してくれる病院は少ないと思いますが、考えてくれる病院はあるはずです。
多少厳しい転職活動になると思うので、転職サイトを利用することを強くおすすめします。
求人を多く持っており、条件に合いそうな病院を探し出してくれます。
面接、採用合否など、転職サイトが間に入ってくれるので、転職活動の労力を抑えることができます。
こぐまも助産技術に自信がなく、お産がとりたくて転職しました。
その時は転職サイトを2ヶ所登録しました。
2ヶ所とも交渉してくれましたが、初めは断られました。
そのうちの1ヶ所が粘り強く交渉してくれ、面接を受けることができ、採用されました。
採用してくれた病院で、自分のなりたい助産師像に向けて力をつけていきましょう!
助産技術が少ないことを承知で採用してくれた病院は、人手不足の傾向があります。
それは不安に思われるかもしれませんが、長く働いてほしいという気持ちから、思っていたより丁寧に教育してくれることもあります。
まずは、どんな助産師になりたいかを考える。
今の職場でなれるかを考える。
今の職場ではなれないと思うなら、転職一択だ!