産科の転職先を探しているんだけど、どのくらいの分娩件数が良いのかな?
どのくらいの分娩件数が働きやすいかは、人それぞれ。
お産をたくさん取りたいかどうかにも、関係するね。
分娩件数と忙しさ、働きやすさは関係があると思っています。
分娩件数が多ければ、とにかく忙しいです。
ただ、それをサポートするスタッフも手厚く、多くの経験を積むことができます。
分娩件数が少なければ、入院患者さんがいない日も稀にあります。
一方で、分娩があれば少ない人数で対応しなければいけません。
大雑把で、主観も含みますが…
・お産の経験を積みたいのであれば、年間500~1000件程度。
・お産重視でなければ、「分娩件数と助産師数の割合」が、自分に合う病院。
この2つの考え方で、働く職場を考えましょう。
「分娩件数÷助産師数」で、助産師1人が取り上げる分娩件数がわかります。
単純計算にはなりますが、助産師の数が多ければ、自分がお産を取り上げる機会は少なくなります。
ただし、働きやすさの指標は「分娩件数」だけではありません。
医師の数、夜勤回数、無痛分娩の有無…。
休日の数、希望休がとれるか、残業や研修の有無など…。
自分にとって働きやすい条件が何かは、自分しかわかりません。
「分娩件数」は、あくまで指標の1つです。
分娩件数の目安をある程度考えつつ、自分にとっての「働きやすさ」を考えていきましょう。
分娩介助の経験を積める分娩件数の目安は?
教育体制が整っている大きな病院で、分娩件数1000件が目安
分娩介助の経験をしっかり積みたいのであれば、そもそも教育体制が整っている病院が良いです。
新人助産師にプリセプターがつくように、中途採用者にも教育担当がつくことがあります。
マンツーマンでの教育担当がつかなくても、希望すれば新人教育とほぼ同様の教育を受けることが出来ます。
教育体制が整っている大きな病院であれば、助産師数も多くなります。
自分が分娩介助数を取るとなると、分娩件数1000件が目安かと思います。
こぐま自身は分娩件数1000件の病院で働いたことがないので、実際のところはわかりません。
今回調べてみて、こちらのページをもとに、「分娩件数1000件が目安」としました。
↓
「助産師の働きやすい分娩件数は?経験を積むために転職したいです。(転職ステーション)」
そのページ内の一意見を載せておきます。
分娩の経験が45例ならまだ新人と同じなので、できるだけ分娩件数が多いところに就職して勉強されてもいいのかなと思いますよ。まだまだ経験がないので中くらいの産婦人科では雇ってもらえない場合もありますし、そこでも1年生がいたらその子達が優先されたらまた分娩が取れない可能性もありますよ。
なので、おすすめはきっちり教育体制が整っていて分娩件数が多いところです。1年目と同じ扱いにしてもらって教育もしっかりしてもらうと成長できると思いますよ。
私の病院は年間1600件ほどありますが、毎年1年生だけでなく分娩の経験数が少ない2年目の子や3年目の子も入ってきます。
うちの場合だと2年目でも3年目でも分娩の経験数が少なければ新人と同じようにプリセプターがつきます。そこで1年で50例はみんなお産を取っていますよ。
おすすめは、「ある程度の教育体制がある病院で、分娩件数500件以上」
上では「大きな病院で分娩件数1000件が目安」と書きましたが、落とし穴があります。
それは、分娩件数1000件を超える病院は、全都道府県にある訳ではないということです。
医療機関ごとの分娩件数は、こちらから見ることができます。
分娩件数(帝王切開含む)1000件以上の病院がないのは、21県。
分娩件数1000件以上の病院が、住んでいる地域にあるとは限らないのです。
単純に、「分娩件数1000件以上の病院を探しましょう!」とは言えないのです。
こぐまとしては、ある程度の教育体制がある病院。
分娩件数は500件以上あれば十分だと思っています。
「ある程度の教育体制がある病院」とは
「ある程度の教育体制」というのは、「既存のスタッフでシフトを回せる体制」だと考えています。
すでにシフトが健全に回っている状況で、初めて「教育、指導」できる余裕が出来ます。
中途採用者を1人とカウントしないと回らないのであれば、教育は出来ません。
注意点としては、シフトが健全に回っているか、就職前にはわかりにくいことです。
面接時、院内の案内時に十分チェックをしよう!
<面接のときにチェック!>
・全スタッフの人数。
・日勤、夜勤の人数。
・休日数。
・分娩件数は、事前に調べて、わからなければ聞こう。
これらから、「シフトが健全に回っているか」ある程度推察できます。
<院内の案内時にチェック!>
・ナースステーションの繁雑さ
・スタッフの動き。
これらから、「勤務中の忙しさ」の一例がわかります。
正直なところ、「シフトが健全に回っているか」「ある程度の教育体制があるか」は、事前に正確にはわかりません。
それはどこの産科施設でも同じことです。
自分で推察した上で、「これ以上はわからない」と腹を括るのもありだと思います。
いくつか候補の産科施設があるなど、詳しく現場の雰囲気を知りたい方は、第三者の意見を聞くのもおすすめです。
↓
助産師ママ、看護師ママの求人の探し方6選!併用例とそのポイントまで解説!
ある程度の教育体制があるかは、自分で推察してみる。
第三者の意見も聞くと良いのね。
「分娩件数500件以上」の理由
日本看護協会が2020年に行った調査では、1件以上の分娩を取り扱った病院の平均帝王切開率は27.5%であるという結果が出ています。
分娩件数が500件あれば、137.5件が帝王切開、362.5件が正常分娩となります。
分娩件数が500件あれば、平均してほぼ毎日正常分娩があります。
ほぼ毎日分娩があれば、分娩の流れをほぼ毎日見ることが出来ます。
分娩係であれば、毎日分娩介助が出来るかもしれません。
分娩係でなくても、毎日産婦さんの状況を見て、分娩係の動きやアセスメントを学ぶことが出来ます。
少ない機会を大事にして、より深く学ぶ考え方もあります。
ただ、お産に関しては一定の感覚をつかむまで、「数を経験」することが大事だと思います。
こぐまが以前働いた産科施設の院長が、その考え方でした。
一定の感覚をつかむまで、優先的に分娩係がつきました。
おかげさまで、それまで5年で50件だった分娩件数が、1年で50件以上となりました。
開大度や展退など、点と点のようだった数字が、どんどん繋がっていきました。
「ほぼ毎日分娩がある」というのは、一定の感覚をつかむために重要です。
そのため、分娩件数が500件以上をおすすめします。
「一定の感覚」をつかむための分娩介助数というのは、50件と考えます。
「助産師の分娩介助件数と助産実践能力の達成度に関する研究」という研究にて、
「分娩期の診断とケア」は、分娩介助件数が50件までは速やかに達成し、それ以降は緩やかに高くなる。
とされているからです。
詳しくは、以前の記事で書いています。
↓
分娩介助件数が少なくても転職できる!大事なのは「どんな助産師になりたいか」
こぐまの場合、はじめ50件を取り上げるのに5年かかっています。
5年かかって点々と学んだ50件と、1年で叩き込んだ50件は、体へのしみ込み方が違います。
「1か月前の復習」を積み重ねるか、「昨日の復習」を積み重ねるか。
後者の方がどんどん頭に入り、体で感じ、動けるようになりました。
ほぼ毎日分娩を見ていく。
だから分娩件数500件以上なんだね。
働きやすい分娩件数の考え方
「分娩件数÷助産師数」が無理なく働けるか
分娩介助の経験を重視しないのであれば、働きやすい分娩件数は人それぞれになります。
1つの指標としては、「分娩件数÷助産師数」です。
この式では、助産師1人が介助する分娩件数がわかります。
自分が1年で何件分娩にあたるか、大まかに予想できるね。
この件数と、自分の体力・気力とを考えて、無理なく働けるかを考えましょう。
毎日1件の分娩介助をしても物足りない方もいれば、週に2,3件でお腹いっぱいの方も。
仕事の前後にママ業もあるため、毎日仕事に体力気力を全振りする訳にはいきません。
週に、月に何件であれば、家庭と両立しやすいのか、自分の目安を考えておきましょう。
「分娩件数÷助産師数」の注意点
「分娩件数÷助産師数」では、助産師1人が介助する分娩件数がわかります。
ただ、同じ“答え”になったとしても、「分娩件数も助産師数も多い」「分娩件数も助産師数も少ない」では、状況が全く違います。
分娩件数が多く、助産師数も多い場合は、お産が多くとにかく多忙になります。
一方で、助産師数が多いと状況に応じてフォローし合えるのが一番の強み。
分娩件数の多さに比例して、負担がどんどん大きくなるとは限りません。
分娩件数が少ない場合は、一見楽に見えます。
ただし、助産師数が少なければフォローがほとんどなく、1人にかかる負担が大きくなります。
この忙しさの違いは、式を解くだけではわかりません。
分娩件数、助産師数から、その忙しさの特色を考えておきましょう。
また、「分娩件数÷助産師数」がどうのという前に、「助産師数」には注意が必要です。
どれだけ分娩件数が少なかったとしても、一定の助産師数は必要です。
こぐまの知り合いは、雇用されている助産師が自分だけという状況で働いていました。
出勤すれば分娩係なのはもちろん、休日もずっとオンコールだったそうです。
いくら分娩件数が少ないとしても、それでは気が休まりません。
なんとなくわかったけど…、「分娩件数÷助産師数」って考えたことないな。
まずは、これまで働いてきた産科施設での「分娩件数÷助産師数」を計算してみましょう。
それを1つの基準とし比較するのが、自分の中で一番想像しやすいと思います。
こぐまは、「分娩件数÷助産師数」が30~50。
助産師数5人程度がちょうど良いです。
月4件程度のお産。ほぼ毎日、助産師が2人出勤する状況になります。
この理想通りの求人があるとは限りません。
とはいえ、自分が無理なく働くための理想条件を持っておくことは大事なことです。
まずは分娩件数、助産師数を確認。
そこから、「分娩件数÷助産師数」を計算してみるんだね。
働きやすさの指標は、「分娩件数」だけではない。
分娩件数と働きやすさは、関係があると思っています。
ただ、働きやすさに関わってくるのは、分娩件数だけではありません。
スタッフの人数や夜勤回数。休日の数などなど。
上げればキリがないですし、各指標の重要度も人によるでしょう。
助産師・看護師の人数
例えば助産師・看護師の人数です。
助産師の数が少なければ、助産診断は1人でするしかありません。
助産師の数が多ければ、その分誰かに意見を求めることができます。
お産が重なっても、安全に対応できます。
産科看護師は分娩介助が出来ないだけであって、妊婦、褥婦、新生児のケアは出来ます。
産婦さんへのバイタル測定、点滴確保も出来るし、器械展開や児受けも出来ます。
分娩室にこもる必要がない分、病棟リーダーとして采配してくれることもあります。
看護師さんがいれば、助産師は分娩に集中することが出来ます。
医師の人数
産科医の数は、治療の円滑さに関わります。
常に複数の産科医が勤務していれば、分娩で外来が完全にストップすることもありません。
緊急帝王切開を行うにもスムーズです。
産科医の数が、助産師の働きやすさとどう関わってくるの?
外来診療中に分娩が進行している場合、外来進行を考えて分娩誘導をしています。
可能な範囲で…とはなりますが、助産師としてはその調整が楽になります。
産科医1人体制の病院で緊急帝王切開をするときは、スタッフが助手として入ります。
助手として入るスタッフにも、プレッシャーがかかります。
病棟スタッフとしても、1人少ない状況で手術室+病棟を回すことになります。
外部医師の応援を待つにしても、夕方執刀となれば、保育園へのお迎えが間に合いません。
逆に、産科医が複数いる場合の働きづらさもあります。
細かな治療方針、検査方法、診察介助のやり方が違う場合があります。
「A先生のときは…、B先生のときは…。」と覚えることが増えます。
小児科医、麻酔科医の有無も、働きやすさに関わってきます。
新生児の状態が悪いときに、小児科医を呼べるのか。
無痛分娩をするときは、麻酔科医の指示の下に出来るのか。
もしママと新生児、どちらも状態が悪ければ?
もし産科医では対応困難な、深刻な麻酔トラブルがあったら?
こぐまは助産師歴8年ですが、両方のケースに遭遇したことがあります。
どちらも小児科医、麻酔科医がいたため、迅速な対応が出来ました。
全ての病院に産科医が複数いたり、小児科医・麻酔科医がいるとは限りませんが…。
やはり小児科医、麻酔科医がいる方が、安全ですし、安心して分娩に臨めます。
自分にとっての「働きやすさ」を考えよう
分娩件数も、スタッフの数も、働きやすさの指標の一つに過ぎません。
この記事では、あくまで「分娩件数」だけを軸に書きました。
仕事と家庭を両立させるために、考えるポイントは多くあります。
「仕事面」で大事なポイントは、こちらの記事で書いています。
↓ ↓
助産師と子育てを両立するために、「仕事面」で大事なポイントを解説!
第三者からの具体的なアドバイスが欲しい方は、仕事探しのプロに頼みましょう。
↓ ↓
助産師ママ、看護師ママの求人の探し方6選!併用例とそのポイントまで解説!
まとめ 働きやすい分娩件数は人それぞれ。他にもいろんな指標を見よう。
産科で働こうと思うのなら、分娩件数は気になりますよね。
でも、「分娩件数が多い=とても大変」「分娩件数が少ない=楽」ではありません。
助産師の数は?休日数は?残業時間は?
「働きやすさ」は人によって違います。
まずは、自分がどんな働き方をしたいのかを振り返ろう。
希望する働き方が出来る職場を、探してみよう。
産科の数が減ってきている今、希望条件を全て満たす職場を見つけるのは困難です。
何かを妥協しないといけなくなるでしょう。
希望条件のうち、何を優先するのか、何は妥協できるのか、それを決めるのは自分です。
「働きやすさ」を考えるにあたり、考慮することは多くあります。
第三者からの具体的なアドバイスが欲しい方は、仕事探しのプロに頼むのも手です。
↓
助産師ママ、看護師ママの求人の探し方6選!併用例とそのポイントまで解説!
決めるのは自分ですが、第三者のアドバイスがあった方が冷静になれる時もあります。
アドバイスの前後で結果が変わらなくても、誰かの後押しがあることは自信になります。
「分娩件数」は1つの指標。
いろんな指標を見て、自分に合った職場を探そう。